もくじ
お寺の池には、「蓮」が植えてあるのをよく見かけますよね。また、蓮の花の上に座った仏像もあるほど、お寺には蓮が多いです。しかし、なぜ蓮なのか疑問に思ったことはないでしょうか。
今回は、仏教と蓮の深い繋がりと蓮という植物の特徴をご紹介していきます。
仏教と蓮
仏教において、花といえば「蓮」を指します。蓮は花言葉にあるように「神聖」や「清らかな心」の意味を持っていて、「悟りの象徴」としてお寺のいたるところに存在します。
極楽浄土には蓮がたくさん咲いていると信じられています。例えば、仏様の座っている台座の花も蓮をモチーフにしています。仏教用語で台座のことを「蓮華座」と言います。
他にも、お経の中で「南無妙法蓮華経」と唱える箇所があったり、池にも生えていたりと蓮は仏教に深く関わりがあります。
蓮の意味
「蓮」とは、6月下旬から8月初旬に咲くハス科の植物です。上品な香り持ち、大輪を咲かせますが、花が咲くのは早朝の数時間だけで、3日ほどで散ってしまいます。
蓮は水生の植物のため、育つの泥沼です。泥沼が汚いほど綺麗な花が咲くという説もあるほど神秘的な植物です。そんな生態が仏教の考えに通づるとして蓮の花が象徴として使われるようになりました。
泥沼を人間の煩悩として表し、人生の中にある様々な苦悩や悲しみに負けず、清らかに咲き誇る生き方の例えとして用いられます。
蓮華の五徳
蓮の花には、人の心のあり方を説いた5つの特徴があります。
- 淤泥不染の徳(おでいふぜんのとく)
どんなに厳しい環境にいても清らかに生きましょう。 - 一茎一花の徳(いっけいいっかのとく)
唯一無二の自分を大切にしましょう。 - 花果同時の徳(かかどうじのとく)
仏の心を大切に育てていきましょう。 - 一花多果の徳(いっかたかのとく)
花を咲かせて、たくさんの人々を幸せにできるようにしましょう。 - 中虚外直の徳(ちゅうこげちょくのとく)
欲に支配されず、真っ直ぐに生きましょう。
これらは「蓮華の五徳」と呼ばれ、この心に極楽にいけると説かれています。5つとも簡単なようで難しいことですが、変わるきっかけにはなれそうですね。
蓮と睡蓮
蓮とよく似た植物に「睡蓮」があります。どちらも水面で花を咲かせる植物ですが、花を咲かせる位置に違いがあります。蓮は水面より高い位置に、睡蓮は水面に咲きます。
また、葉っぱにも特徴があります。花と同じで葉も伸びる位置が異なるのはもちろんですが、それに加え、蓮の葉は水を弾き、睡蓮は水を弾かない植物です。
全く別の植物ですが、蓮と睡蓮は「蓮華」として一括りにされがちです。それは、インドの歴史と大きく関係しています。
例えば、お供え物で見かける蓮華の中には、ピンクの他、白や水色、黄色がありますよね。色にはそれぞれ意味あります。
仏教経典に「摩訶般若波羅蜜経」というお経が存在しますが、その中には、4種類の記述が説かれています。
特に重要視されているが、「白蓮華」と「紅蓮華」と呼ばれるものです。この2つは「蓮」を意味しています。「白蓮華」は煩悩に負けることなく、清らかな仏の心を表し、「紅蓮華」では仏の救済を表しています。白蓮華は「分陀梨迦(プンダリーカ)」というインドにある白系の蓮、紅蓮華は「波頭摩(パドマ)」という紅系の蓮を指しているとされています。
残りの「青蓮華」と「黄蓮華」は「睡蓮」のことです。青は古代インドで神の象徴とされ仏教にも取り入れられています。「優鉢羅(ウパトラ)」という東南アジアにある熱帯睡蓮と言われています。黄色についてはインドでは白と同等に見られ、夜咲白睡蓮の「プベスケンス」とされています。
このように「蓮」や「睡蓮」にはインドの宗教文化が根付いているのですね。