お寺の歴史を教えてください。
長徳寺の歴史は1338年から始まります。本山は神奈川県藤沢市にある時宗総本山清浄光寺ですが、東北遊行廻国時、遊行10代元愚上人がこの一関で亡くなられた事を偲び祀ったのです。不退山長徳寺がある岩手県一関市藤沢町の町名もこれに由来します。
本尊は岩手県指定有形文化財の「木造阿弥陀如来立像」です。「安阿弥様阿弥陀如来像」と「運慶様阿弥陀如来像」の両様の特徴を兼ね備えた鎌倉時代の阿弥陀如来像だと、美術史や木彫像の典型として高く評価されています。
蘇民祭とはどんなお祭りですか?
長徳寺蘇民祭は120年以上の歴史あり、不動明王御縁日の蘇民祭として知られています。「岩手の蘇民祭」として選択無形民俗文化財にも登録されている伝統あるお祭りです。
大聖不動明王の御腹には胎内佛が納められていて、安産や子宝、子孫繁栄のご利益があります。また、1893年に起きた火災から諸災難消除のご利益もあると伝えられています。
おもてなしを合言葉に、地元の女性達が精進料理(けんちん汁)」を振舞ってくれるのも特徴の一つです。
お祭りで特に注目していただきたいのが、全裸に下帯のみを身に付けた男たちの「蘇民袋争奪戦」です。別名、「裸祭り」とも言われています。男達のエネルギーが激しくぶつかることで、災厄を払い、五穀豊穣を願っています。
昔は正月27日~28日にかけて行われた行事ですが、現在は3月第1日曜日に開催しています。
時宗の教えとは何ですか?
時宗とは、浄土教の一宗派で鎌倉時代に一遍を祖師とした宗派です。
大慈悲の阿弥陀佛に帰命するお念仏が一番大事なこととして唱えられています。家業に勤め、励み、睦み合うことで正しい道が開かれ、健やかに長寿を保つことができるという教えです。つまり、念仏を唱えることで浄土往生が約束されると考えています。
時宗では阿弥陀仏を本尊にしており、「南無阿弥陀仏」を唱えるのが特徴です。
住職として心掛けていることはありますか?
一人一人の幸せを願い、地域の中で心の拠り所となるお寺を目指しています。通常のお寺と違い、長徳寺には臨床宗教師が常駐しています。臨床宗教師とは、被災地や医療機関、福祉施設などの公共空間で心のケアを提供する宗教者です。
苦悩や悲嘆を抱える方々に対して、相手の価値観を尊重しながら宗教者として教えを説いていきます。
現在は、県立病院緩和ケア病棟をはじめ、福祉施設や電話相談などでもお話しさせていただいております。
手芸教室を行なっていると聞いたのですが、誰でも参加できるのでしょうか?
はい。長徳寺には、慶壽庵(けいじゅあん)という宗派や地域を問わず、誰でも気軽に集まれる場があります。手芸を通して、様々な人とコミュニケーションを取ることで参加者同士の心のケアにも繋がっています。作品が病院や福祉施設に展示され、施設職員や施設利用者との交流も生まれているのですよ。
最近では、デイサービスセンターをはじめ、老人ホームの職員や地域の消防団員、劇団員などあらゆる職業の方が参加しています。
手芸教室は年に2回ありますが、展示会を目標に活動する中で、うつ病の症状が改善したという方もいらっしゃいます。つまり、手芸教室が心の拠り所となっているのですね。
長徳寺蘇民祭でも、「ふじさわ吊るし雛まつり」として、藤沢町時代の町花であった藤の花の吊るし飾りがお寺の本堂に飾られます。「木造阿弥陀如来立像」と共に豪華な飾りが展示されているので、ぜひ一度ご覧になってみてくださいね。