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見た目が怖い、毒がある、動き方が気持ち悪い……。様々な理由で蛇があまり好きではない人は、多いのではないでしょうか。
しかし蛇は古来から神聖化されていて、仏教との関りも非常に深い生き物なのです。今回はそんな蛇と仏教について、ご紹介していきます。
■仏教の守護神ナーガ
ナーガとはインドの蛇神で仏教の守護神のこと。中国で龍の姿に変わり日本へ伝わったため、日本でも龍の姿で寺院の天上画に描かれています。各地の伝承によっては蛇そのものだったり頭が七つあったり、下半身が蛇の人間だったりとその描かれ方は様々です。
ナーガはインド神話では地下世界パーターラに王国を築いて暮らしています。強力無比な毒をもっており、敵対者を死に至らしめる他に、信奉する者に対しては祝福を与えてくれます。
例としては、菩提樹の下で瞑想するお釈迦様を風雨から守ったムチャリンダという名前のナーガがいます。他にもお釈迦様の息子ラーフラの名前には、ナーガの頭になる者という意味が込められています。
■蛇と対立関係にあるガルダ
ガルダは仏教において金翅鳥(こんじちょう)として尊ばれ、龍と共に仏を守護する存在です。しかしインド神話では、人々に恐れられているナーガ族を退治する聖鳥として尊ばれています。また日本では、ガルダは烏天狗のモチーフとなっています。
■七福神の弁財天との結びつき
弁財天はインドの神様でしたが、仏教に取り入れられてからは財福、福徳、芸能、学問のご利益を司るとされています。元々水の神で、その使いは蛇でした。そこから弁財天の縁日が「辰の日」となっていったのです。
中世では比叡山で弁財天と宇賀神という神を結びつける経典が作られ、両者は同じであるとされていました。その宇賀神のサンスクリット語がウガヤ。蛇を意味するサンスクリット語のウラガに似ていることから、弁財天と蛇との関係性が存在するという説もあります。
京都の三室戸寺には、頭が老翁で体が蛇の宇賀神の像が本堂の前に建てられています。かなりの大きさと迫力がありますので、京都へ訪れた際はぜひお立ち寄りください。
■三毒
三毒とは、仏教において苦しみの原因となる煩悩の中で、最も根源的なものを意味します。貪瞋痴という言葉で表現されており、それぞれ貪欲・瞋恚・愚痴という煩悩を意味する言葉です。チベット仏教では三毒を動物で表しており、貪→鶏、瞋→蛇、痴→豚となっています。
貪欲は欲しいものに対して執着する心。瞋恚は怒ること。そして愚痴は仏教では真理を知らないことを意味します。これらはどれも私達が自然と持っている心の動きです。これをなくすことはそう簡単ではありません。仏教の教えでは、三毒をなくすのではなく、制御すると考えます。滅すると制するとでは大きな違いがあるのです。
■お寺で蛇に遭遇するとラッキー?
神聖な場所で蛇に遭遇すると、歓迎されていないのかも?悪いことの前兆?と思ってしまう人が多いです。しかし実際は逆。蛇は仏様の代わりにお出迎えしてくれているそうなのです。
もし蛇を見かけた時に「怖い」という気持ちが強かった場合は、仏様からの「危ないよ」「注意して」というメッセージだともいわれています。逆に「可愛いな」と感じた時は、仏様から「よく来たね」と歓迎されているのだとか。ただし、蛇を見つけたからといって不用意に近付くと危険なので、そっと見守るだけにしてくださいね。
他にも犬や猫、鳥なども仏様の化身として現れているという説もあるので、蛇以外にも何らかの動物に会えるとラッキーなことなのだと思いましょう。因みに風が吹いたり天候が変わったり、清々しく気持ちいと感じる時も、歓迎のサインなのだそうです。