仏教と関係のある「ことわざ」

ことわざは、「昔から言い伝えられてきた風刺や教訓を含んだ短い言葉」のことですが、じつは仏教と関係があるものも多く存在しています。意外と身近なことわざも仏教からきていて、新しい発見もあります。

難しい仏教の教えがことわざになることで分かりやすくなっているため、そこから楽しみながら仏教の世界へと足を踏み入れてみるのもいいかもしれません。

誰もが一度は聞いたことがある「ことわざ」

・馬の耳に念仏

人にとってありがたい念仏も馬に聞かせてもそのありがたさが理解できないことから、いくら忠告や警告しても全く耳を貸そうとせず、効き目がないさま
似たことわざに豚に真珠、猫に小判があります。理解できない、価値がわからないという意味から、よく同じような場面で使われています。

じつは別の解釈として、価値がわからない馬に念仏を唱えるような坊主は信用がおけない、という意味で使われることもあるようです。

・釈迦に説法

ある分野について全てを知り尽くしている人に、教えようとする愚かさをたとえたことわざです。これは仏教の教えを説いた釈迦本人に説法を行った人の、愚かな行為が語源となっています。

じつはこのことわざには2つの使い方があります。意味通り愚かな行為をしている人に使うこともありますが、自分をへりくだる時にもつかうことがあるのです。何らかの説明をする時に「あなたには釈迦に説法ですが」と前置きしておくことで、へりくだった表現になります。

・知らぬが仏

知れば怒ったり悲しんだりするようなことでも、知らなければ心を乱すことなく仏のように穏やかでいられるということのたとえ。また、本人だけが知らずに平然としている様子を嘲る時にも使われます。このことわざは日常でも使ったことがある人は多いのではないでしょうか。

ちなみに知らぬが仏の後に「知るが煩悩」という言葉を付けて意味の補足をすることもあります。知らぬが仏、しかし知ってしまえば悩みが増すだけだと念を押しています。「ないが極楽」を知らぬが仏の前に付ける場合もあり、これはお金がなくても贅沢を知らなければ平穏に暮らせるという意味になります。

このことわざも仏教と関係していた!

・三人寄れば文殊の知恵

文殊とは知恵をつかさどる菩薩を意味し、とくに頭が良いわけでもない凡人でも、3人集まれば素晴らしい知恵が出るものだということをたとえたことわざです。

一見ポジティブな意味のことわざですが、使う相手には注意が必要です。ことわざの3人は凡人であることが前提なので、目上の人に使うことはもちろんNG。

・噓も方便

物事をスムーズに進めるためには嘘も必要だという意味のことわざ。目的を達成するためであり、相手の利益にもなるための方法として嘘を肯定しています。

この「方便」は仏教から生まれた言葉で、仏でも教え導くためには嘘をつくという言い伝えが由来です。ただし方便は、一般的な嘘の意味である正しくないことではなく、真実でもなく嘘でもないものという意味となります。

仏教には「有相方便」という言葉があります。有相は形のあるものという意味で、形のないものという意味の無相が対義語です。仏様が伝えようとしている真理には形がなく理解することが難しいため、言語や絵、像などの形があるものにしました。そのことこそが、真実でもなく嘘でもない「方便」だということから、噓も方便ということわざが生まれたとされています。

・坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

その人を憎むあまり、関わるもの全てが憎くなることのたとえです。逆の意味をもつことわざとして、痘痕もえくぼがあります。

袈裟とはお坊さんが肩にかけている布のこと。
じつはこのことわざが生まれた背景には、江戸幕府が立てた制度「寺請制度」が関係しているのです。

寺請制度とは、すべての民が檀家となり寺請証文を受け取らなくてはいけない制度のことで、所謂当時の身分証明書のようなものです。旅行や仕事をする際に必要なもので、当時国外からの武器持ち込みを懸念していた幕府は、この制度により国外の宗教なども含め厳しく取り締まりました。

そしてこの制度により、お寺は本来の布教がおろそかになり寺請証文を発行するために金銭を要求するなど、汚職が相次ぎました。

そんなお坊さんを憎み着ている袈裟を見ても腹が立つという思いが、ことわざとして今に伝わっているのです。

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