もくじ
御朱印は、お寺を参拝した時に押印してもらえる印章のことです。押印だけでなく、日付やお寺の名前なども墨書きされます。最近では、御朱印集めをしている方も増えていますが、御朱印はどのようにしていただくのでしょうか。
今回は御朱印の歴史やいただき方、マナーについてご紹介していきます。
■御朱印ってどんなもの?
御朱印はお寺でもらう参拝証明です。御朱印には、参拝した日付や寺院の名称、祀られている仏様の名称などが墨書きされています。期間限定の御朱印やアートな御朱印も人気で、中には御朱印待ちの人で行列ができ何時間も待たなければいけないこともあるのだとか。
■御朱印の由来
諸説ありますが、一般的には平安時代の巡礼「西国三十三カ所巡り」が御朱印めぐりの原点といわれています。西国三十三カ所とは、関西にある観音様をまつる33のお寺の総称です。三十三カ所のお寺巡り、全て巡った御朱印帳は極楽浄土へのパスポートになるといわれています。
他にも西国八十八カ所霊場詣、七福神めぐりなどの巡礼とも密接な関係にあったことが確認されています。
弘法大師が開いた西国八十八ヶ所霊場を参拝読経するお遍路は、大師が亡くなった後も弟子や行者が引き継がれ、修行の一環として各地を巡っていました。お経を書き写す修行の「写経」をした証としてもらえるのが当時の御朱印です。今のように墨書きの文字はなく、朱印が仏様の分身として扱われていました。
後にその習慣は仏教に縁する者に限らず、庶民の間にも浸透し始めます。庶民の間では、修行という意味合いは薄くなり、各地の社寺を参拝してまわる巡拝という形で広まりました。
その中で朱印だけでは分かりにくいと言われるようになり、朱印の上に文字や日付が書かれるようになったようです。初めは仏様の分身の上に文字なんて、と抵抗もあったそう。
今のように御朱印を集めるようになったのは、西国巡礼や四国遍路が旅の形として定着した戦後です。意外にも新しい風習なのですよ。ちなみに今でも納経しなければ御朱印をもらえない場所もあります。
近年では年配の方に加え、若い人の間でも御朱印はブームであり、趣味や旅行スタイルに御朱印集めを取り入れる方も増えています。
■お寺で御朱印をもらう流れ
1. 御朱印帳を用意しておく
ノート等は失礼なので、必ず御朱印帳を用意してください。おすすめはお寺が販売している御朱印帳です。可愛いものから落ち着いたデザインのものまで、お寺の個性が出ている御朱印帳があります。1000円程度で買えるものがほとんどです。
ここでひとつ注意しておきたいのが、神社用と御朱印帳を使い分けるかどうか。分けなければいけないというルールはなくほとんどのお寺で問題なく御朱印をもらえます。必要以上に気にする必要はありませんが、中には神社と一緒になった御朱印帳では断られることもありますので、分けておくことをおすすめします。
2. 参拝する
御朱印は参拝の証です。必ず参拝してからもらいましょう。御朱印集めは、スタンプラリーとは全く違うものだと思ってください。
3. 御朱印をいただく
納経所か寺務所でいただきます。「御朱印をお願いします」と声をかけてください。時には何かしらの理由でもらえない日があるかもしれませんが、その日は縁がなかったということで、別日にもう一度参拝してからいただきましょう。代金は300円のところが多いようです。もらった御朱印は仏壇などに置いて保管するのが良いそうです。
■御朱印をもらう前に必ず参拝!
今さら聞けないお寺の正しい参拝方法
お寺の入り口には俗世との境をあらわす山門があります。山門の前で合掌とともに一礼してから中に入りましょう。また、山門をくぐる時は敷居を踏まないように注意してください。
手水舎に場所まで着いたら、手を口を清めます。一礼をしてから右手に柄杓を持ち、左手→右手→口→左手→柄杓の柄の順に水でかけて心身を清めましょう。
本堂に着いたら、お賽銭を入れます。投げ入れず、優しく仏様に差し上げるように入れましょう。合掌しながら一礼したら、日頃の感謝や想いを念じます。その後、再度一礼して本堂を後にします。
神社の参拝方法もおさらいしておきましょう
神社は鳥居を境目にしているため、鳥居をくぐる前に一礼しましょう。参道を歩く際は、端に寄ります。中央は神様の通り道なので、通ってはいけません。手水舎まで着いたら、お寺の手順と同様に手と口を清めます。
拝殿に着いたらお賽銭を入れましょう。鐘がある場合は鳴らすのも忘れずに。神社はお寺と違い、「二礼二拍手一礼」が一般的な参拝方法です。まず、神様に敬意を込めて深く二礼します。その後、胸の前で右手を少し手前にずらして2回拍手をしましょう。右手をずらすことで、神様に敬意をはらっているという表現になります。覚えておくと良いですよ。
神様にご挨拶をしたら、感謝と想いを伝えましょう。最後にもう一度礼をして、拝殿を後にしましょう。
■御朱印に書かれていること
神社の御朱印は文字を崩さず書きますが、お寺の場合文字を崩した豪快な墨書きが一般的です。印は「山号・札所印」「三宝印」「お寺の印」の三つ。三宝印とは、仏・仏の教えである法・教えを広める僧、の三つの総称です。この三宝印をご住職に教えてもらいながら自分で押すことができるお寺もあります。
中央にはご本尊の名前や安置されている建物の名称が書かれます。またお寺では複数の御朱印をもらえることが多いです。御朱印の文字の上にはお寺に祀られている仏様を表す梵字が書かれています。
上記でご紹介したものは御朱印の中でも最低限書かれる情報です。デザインはお寺や神社によって多種多様。植物や動物、武将などをモチーフにしたデザインもあります。特に人気なのは、期間限定の御朱印です。お正月や端午の節句、お祭りごとや行儀ごとにデザインを変えている寺院もあります。大きな寺院や有名な寺院は御朱印をいただくのに並ぶこともあるため、早めの時間帯に参拝することをおすすめします。
御朱印はお寺とのご縁を結ばれた証であり、修行の証でもあります。自分が亡くなる際に棺に入れてもらうことで極楽浄土へ導かれるといわれているので、もらっておしまいではなく、その時まで大切にしておきましょう。
■御朱印帳のデザイン
御朱印をもらうために欠かせない御朱印帳。お寺ごとにオリジナルの御朱印帳も販売されているので、いくつかご紹介していきます。
・岩手県の中尊寺
世界文化遺産に登録されていて、国宝や重要文化財も有するお寺。
中尊寺の御朱印帳は国宝「金堂華鬘模様」が型押しされた布で装丁されています。中尊寺では10種類以上の御朱印もいただけるので、御朱印巡りをしている人の間でとくに人気があります。
・東京都の浅草寺
東京で最古のお寺、浅草寺。毎日大勢の観光客で賑わっています。
浅草寺の御朱印帳には雷門の大提灯がデザインされており、印刷ではなく蒔絵で丁寧に描かれています。
・京都の建仁寺
水墨画の龍の中でも随一と言われる海北友松の傑作が描かれた御朱印帳です。サイズはやや大きめ。
さらにこだわりたい方は、オリジナルの御朱印帳を自分で作るのもおすすめです。和紙や布を使って、DIYしている方もいます。専用のキットも販売されているので、気になる方はぜひ調べてみてくださいね。
■御朱印帳袋は必要?
御朱印をいただいたら、そのまま鞄に入れて持ち運んでもかまいませんが、突然の雨で濡れてしまったり鞄の中で他の荷物と一緒にごちゃごちゃになったりすることがあります。特に御朱印帳にとって水は大敵なので注意が必要です。万全を期して、やはり御朱印帳袋は用意しておきましょう。
最も一般的な御朱印帳袋は巾着型で、デザインも豊富なので選ぶのも楽しくなります。その日の気分によって色々と変えてみるのもいいかもしれません。ただ、御朱印帳の角が擦れて傷つきやすい難点があります。
次に多いのが袱紗の形で、こちらは大人っぽく上品なイメージがあります。ただ値段が高めなのと、複数御朱印帳を入れることができないのであまり融通が利きません。
御朱印帳袋はお寺やインターネットで購入できます。ちなみに防水として優れているのはジップロック。見た目にはあまり可愛くありませんが、実用的なものとしてかなり重宝するためおすすめです。
ちなみに、意外と売っていそうな仏具店や文具店では御朱印袋は見かけません。御朱印袋ではなく風呂敷を置いているところがほとんどです。しかし、風呂敷はサイズが大きいため、何冊か持って歩くのであれば、ちょうど良いアイテムですよ。
■御朱印をもらえないお寺もある
「御朱印をお願いしても断られたらどうしよう」「怒られるかもしれない」などと、心配でなかなか御朱印巡りに行けないという方もいるのではないでしょうか。御朱印巡りで嫌な気持ちにならないためにも、以下のことを頭に入れておいてください!
・御朱印がないお寺
お寺なら100%御朱印がある、というわけではありません。まず小さなお寺で授与所がない場合は御朱印をもらうことができません。いつ行っても人がいないというお寺はまずもらえないので、注意しましょう。事前に電話などで確認しておくと良いかと思います。
・浄土真宗では原則として御朱印をもらえない
有名なお寺ですと京都の西本願寺や東本願寺、東京の築地本願寺では御朱印をもらえません。ただ、京都の佛光寺では「法語印」、または参拝記念という形でもらえることもあります。まずはインターネット等でお寺の情報を調べてから行くようにしましょう。
・御朱印はあっても、もらえないこともある
御朱印はコンビニでいつでも買えるようなものではありません。必ずもらえる時間があるので、前もって確認しましょう。
特に小さな神社の場合だと、昼食時はお留守にされている場合も多いので、その時間帯は避けた方が良いでしょう。また、社務所は基本的に9時か10時から16時か17時まで開いています。それ以外の時間帯は御朱印をいただけないことがほとんどなので、注意しましょう。
・納経の証
元々は写経を行った証だった御朱印。現在もお寺によっては、写経修行を行った証としてでしか御朱印をもらえないケースもあります。
・マナーが悪いと断られる
昼間の休憩中に御朱印をお願いしたり、一人一冊なのに何冊もお願いしたり。マナーを守らない人には断られるどころか怒られることもあります。常識を守り、マナー違反をしないよう十分に注意しましょう。
その他にも大事な法要などで御朱印をもらえないこともありますが、決して無理にお願いしないでください。
御朱印はもらえて当たり前のものではありません。時間や日にちを変えて、もう一度訪れた時に楽しみを取っておくような気持ちでいてくださいね。