悪いことをすると地獄に落ちる!?仏教における地獄の世界

仏教における世界観の一つである地獄。一般的には大きな罪を犯した者が、死後に生まれる世界とされています。では、罪を犯さなければ地獄に落ちることはないのでしょうか?

そうではありません。実はほとんどの人が地獄へ落ちる可能性があるのです。今回は仏教における地獄の世界について、徹底的に解説します。

■地獄とは

地獄は生きている間に罪を犯すことにより導かれる死後の世界のことで、仏教における奈落と同じ意味です。

日本では死後の世界を多くの人がイメージしており、これには仏教の教えである「輪廻転生」が深く関わっていると考えられます。輪廻転生とは何度も生まれ変わりを繰り返すことで、そこから抜け出すには善い行いをしなくてはいけません。精神的にも肉体的にも浄化された状態となり仏となるまで、永遠にこの世とあの世を行き来するのです。

生まれ変わる世界は全部で六つ。これは「六道」と呼ばれており、このうちの一つが地獄とされています。六道には下位世界が地獄以外にも三つあります。

餓鬼道

鬼に生まれ変わる。地獄よりも苦しく、飢えに苦しむことになる。

畜生道

非業の死を遂げた者が落ちる世界。様々な動物に生まれ変わる。

修羅道

何度も戦い、死んで生まれ変わってはまた戦う、を繰り返します。

■なぜ地獄に落とされるのか

地獄に落とされる基準の悪は、法律上の罪ではなく仏教における五つの戒律を破ることです。

・不殺生…生き物を殺さない(肉を食べることも×)
・不妄言…嘘をつかない
・不倫盗…盗まない
・不邪婬…享楽に溺れない
・不飲酒…酒を飲まない

どれか一つでも破れば地獄行き。これではほとんどの人が地獄に行く可能性があるということになります。

■死後の審査

死後、約50日にも渡り様々な審査を受けなければいけません。

死者の魂はまず不動明王の前で、罪が全て記録された獄録をもとに書類審査を受けます。その後、釈迦の裁きを受け三途の川を渡ります。

次に文殊菩薩の裁きを受けますが、現世で邪淫のある者は猫によって乳首を噛みちぎられ、蛇に首を締め上げられてしまうとされています。その後に普賢菩薩の審判を受けます。ここでは現世での嘘について裁かれ、重罪は地獄、中罪は餓鬼道、軽い者でも畜生道に落とされます。

そして次に裁きを受けるのが、あの有名な閻魔大王。生前のあらゆる悪業を見ながら罪を裁きます。
その後弥勒菩薩の裁きを受け、最後に薬師如来の裁きを受けます。そこでは六つの鳥居があり、それぞれが六道のいずれかに通じています。ここで来世に生まれ変わる世界の判決が下されるのです。

■地獄の種類

審査の後地獄へ行くことが決まると、罪の重さによって八つの内どの地獄へ行くかが決められます。

それぞれの罪レベルは以下の通りです。

  • 等活地獄…殺生
  • 黒縄地獄…殺生+盗み
  • 衆合地獄…殺生+盗み+性行為
  • 叫喚地獄…殺生+盗み+性行為+酒
  • 大叫喚地獄…殺生+盗み+性行為+酒+嘘
  • 焦熱地獄…殺生+盗み+性行為+酒+嘘+仏教冒涜
  • 大焦熱地獄…殺生+盗み+性行為+酒+嘘+仏教冒涜+女性陵辱
  • 阿鼻地獄…殺生+盗み+性行為+酒+嘘+仏教冒涜+女性陵辱+五逆

では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

等活地獄

地獄の中では最も苦しみが少ない世界です。虫一匹でも殺したことがある者は地獄行きです。等活地獄に落ちると、死者同士で骨になるまで1250万年戦うことになります。

等活地獄の周辺には16個の小地獄が広がっています。それらに落ちる条件も罪の重さで変わってきます。詳細については現在分かっているもので7つです。

  • 屎泥処(しでいしょ) 弱い者をいじめる
  • 刀輪処(とうりんしょ) 強盗
  • 瓮熟処(おうじゅくしょ) 毛のある動物を食べる
  • 多苦処(たくしょ) 暴力を振るう
  • 闇冥処(あんみょうしょ) 宗教信仰により羊や亀を殺す
  • 不喜処(ふきしょ) 音で怯えさせて動物を殺す
  • 極苦処(ごくくしょ) 短気でキレる

黒縄地獄

殺生に加えて、盗みの罪がある者は黒縄地獄に落とされます。熱鉄の縄で体を引き裂かれるなど一億年拷問を受け続けることになります。

黒縄地獄にも小地獄が16個ありますが、詳細が分かっているものは以下の3つ。

  • 等喚受苦処(とうかんじゅくしょ) 働かずに物を盗む
  • 旃荼処(せんだしょ) 嘘をついて福祉や援助を受ける
  • 畏鷲処(いじゅうしょ) 強盗殺人

衆合地獄

殺生、盗みに加えて性行為をした者が落とされる地獄が衆合地獄です。衆合地獄は山々に挟まれていて、時折、天から山が降ってくる山に体を粉々にされます。そして、鬼やライオンに食べられるという行為を8億年の間苦しみ続けます。

小地獄の数も多く、16種類もあります。子どもをいじめた者が落ちる場所や、浮気をした者が落ちる地獄など様々なエリアに別れていますよ。

叫喚地獄

殺生、盗み、性行為に加えてお酒を飲んだ者が落ちます。罪の重さによって、拷問も様々な方法が取られます。例えば、大鍋に入れられて鬼に食べられたり、目から火を出す大きな鬼に追い回されたりします。拷問は64億年続くことになりますが、ここまでいくと永遠に近い状態ですね。

小地獄の種類はやはり16種類ですが、自分がお酒を飲むというよりは人に飲ませる行為が罪に値するので、お酒の強要はしないようにしましょう。

大叫喚地獄

殺生、盗み、性行為、お酒に加えて嘘をついた者が落ちるのが大叫喚地獄です。あの有名な閻魔大王がいます。「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」という言葉があるように舌を刺し貫かれ続ける拷問が待っています。

嘘をつかず生きることはほぼ不可能なので、大叫喚地獄も私たちにとっては身近な地獄の一つです。小地獄のレベルは権力者絡みのことが多いので、お金を得て人が変わってしまうような場合だと罪の重さもかなり重くなります。

灼熱地獄

殺生、盗み、性行為、酒、嘘に加えて邪見を広めた者が落ちる地獄です。邪見とは、仏教の教えに背く教えや行動をすることを指します。頭から足まで何度も熱鉄の棒で突かれます。最終的には肉団子のようになり、鉄鍋で何度も炙られる拷問が続くのです。

大焦熱地獄

殺生、盗み、性行為、酒、嘘、邪見の流布の他、修行僧の邪魔をした者が落ちる地獄です。一生懸命、頑張っている人の邪魔をすると大焦熱地獄行きということになります。

炎の刀で体の皮を剥ぎ取られ、沸騰した熱鉄を体に注がれてしまいます。

阿鼻地獄

最も罪の重い者が落ちる場所。阿鼻地獄は18人の鬼や巨大な城、刀の林、銅の犬、8本角の牛に取り囲まれていています。幾重もの罰が繰り返され、鉄の瓦が豪雨のように降り注ぎ体を砕かれたり、飢餓のために自分の体を焼いて食べる羽目になったり、巨大な鳥に捕まえられ石の山に落とされたりします。

過酷な阿鼻地獄は別名「無間地獄」とも呼ばれています。「五逆」というのは、以下の5つの罪の総称です。

  • 父の命を奪う
  • 母の命を奪う
  • 阿羅漢の命を奪う
  • 仏様を傷付ける
  • 寺院を焼き払う

流石にここまでやる人はなかなかいないでしょう。ただ、行きている限り何らかの罪に問われることは間違いありません。

■極楽浄土への道

地獄へ落ちるのはもちろん嫌ですし、六道のどれも苦しみを伴います。ではどうすれば輪廻を離れて極楽浄土へ行けるのでしょうか?

方法が一つあるとされています。それは生きている時に仏教を聞くこと。六道輪廻の根本原因を断ち切ることこそが極楽へ往ける方法なのだそうです。これだけ聞くと簡単に思えますが、実は多くの人がそれをしないのです。

このことから、お釈迦様は極楽浄土には往き易くして人なしと説いています。これは極楽浄土へは人間の努力では往くことができないが、阿弥陀仏のお働きで簡単に往ける、という意味。

普段私たちは自分の力を頼りに生きています。ですが時にはそれを過信しすぎてしまいます。自分の力も大事だけど、限界があるという教えなのです。

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